オリジナル小説 恋愛

恋のイルミネーション物語/第3部・秋外伝4🎃『パンプキン☆イルミネーション』

小説タイトル『恋のイルミネーション物語/第3部・秋外伝4🎃『パンプキン☆イルミネーション』


「Trick or Treatより、君と笑いたい!」🎃💕

秋のハロウィンシーズン。

街にはオレンジ色のカボチャや魔女、ゴーストの飾りが並び、いつもの街が少しだけ不思議な雰囲気に。

美大から会いに来てくれた先輩と、るなはハロウィンイベントへ。

仮装するほど本格的ではないけれど、二人でカボチャスイーツを食べたり、ハロウィンゲームをしたり、写真を撮ったり。

「お菓子をくれなきゃ、いたずらしますよ?」

なんて冗談を言いながら、楽しい時間を過ごす。

そして夜。

オレンジ色のカボチャランタンが街を照らす中で、るなは気づく。

夏のような激しいドキドキでもなく、秋いちごのような甘い照れでもなく。

ただ一緒に笑っていることが、こんなにも楽しい。

そんな「楽しい恋」の物語です。

 

 

ジャンル

青春恋愛小説/アイドル的ラブストーリー/季節物
(全年齢・やさしい恋)

主要登場人物(6名)


1. 星野 るな(ほしの るな)

  • 年齢:18歳

  • 性別:女性

  • 立場:高校2年生、ひかりの親友(ひかりとは永久親友)

  • 性格:性恋バナ担当で親友の背中を押す役。いちごとチョコがあれば幸せ。ズレた発言で周囲を和ませる。恋に対してはマイペースで、「急がない恋派」

  • 役割:今回の主人公。一応気になる人はいるが、親友と甘いものがあれば満足。誰からも愛されるキャラだが、決してお節介ではなく、ほんの少し背中を押すタイプ

2.桐生 蒼(きりゅう あおい)

  • 年齢:19歳

  • 性別:男性

  • 立場:美術大学1年生

  • 性格:穏やかで観察眼が鋭い。感性が豊かで、言葉選びが独特

  • 役割:るなの「一応気になる人」。るなの"ズレた発言"を面白がり、自然体で接してくれる。るなが唯一「ちょっとドキドキする」相手


3. 白雪 ひかり(しらゆき ひかり)

  • 年齢:18歳

  • 性別:女性

  • 立場:高校3年生、るなの親友(るなの"永久親友枠")

  • 性格:明るい・ちょっと照れ屋・感情表現が素直

  • 役割:恋愛の経験者・るなの支え


4. 小日向 まな(こひなた まな)

  • 年齢:17歳

  • 性別:女性

  • 立場:高校2年生で後輩

  • 性格:元気で憧れ体質。るなを「るな先輩」と慕っている

  • 役割:るなの恋心に最初に気づき、さりげなくサポートする役割。純粋な応援者

5.橘 ゆずは(たちばな ゆずは)

  • 年齢:18歳

  • 性別:女性

  • 立場:高校3年生、るなのクラスメイトでひかりとるなとは友人

  • 性格:しっかり者でちょっと毒舌。でも根は優しい

  • 役割:るなの恋を外側から冷静にツッコミつつ、実は誰よりも応援している


6. 朝比奈 透(あさひな とおる)

  • 年齢:19歳

  • 性別:男性

  • 立場:大学1年生

  • 性格:優しい・落ち着いている・少し不器用

  • 役割:白雪ひかりの恋人


舞台・設定

街(イルミネーションのある商店街)

  • 場所:
    地方都市の高校とその周辺。商店街、カフェ、コンビニ、公園、そして冬から春にかけてのイルミネーションスポット

  • 地方都市

  • 毎年11月から3月まで
    「ウィンターイルミネーション+月1回の冬花火」が行われる街

  • 高校・駅前・商店街・川沿いの花火スポット


物語の世界観を特徴づける重要な設定:

  • 「るな基準の記念日」という概念。るなは日常の小さな幸せを勝手に記念日化する

  • いちごとチョコという二つの「甘さ」が、恋心のメタファーとして機能

  • 「恋は急がなくていい」という、るな独自の恋愛哲学

  • ひかりと透の関係が「ゆっくり育てた恋の成功例」として物語の背景に存在

テーマ「実りの秋。そして、少しずつ近づく二人の距離。」

夏祭りの日から数週間。

花火の夜に芽生えた想いは消えることなく、
るなの胸の中で少しずつ大きくなっていく。

まだ恋人ではない。

でも、もう「憧れ」だけでもない。

そんな"恋になる途中"の物語です。

 

恋のイルミネーション物語/第3部・秋外伝4🎃『パンプキン☆イルミネーション』曲

曲紹介『恋のイルミネーションシリーズ』

この秋の物語、第3部・秋外伝4🎃『パンプキン☆イルミネーション』からオリジナル曲が出来ました。
オリジナル曲「パンプキン☆イルミネーション」


タイトル:『パンプキン☆イルミネーション』歌詞紹介

【歌詞】

[Intro]
Trick or Treat!
ほら 夜が始まるよ
オレンジ色の街
魔法をかけて!

[Verse 1]
大きなカボチャ 見つけた瞬間
思わず駆け出す 帰り道
甘い香りの スイーツたち
どれから食べよう?

パンプキンプリン
パンプキンケーキ
パンプキンパフェも 気になるの
「食べすぎじゃない?」
そんなこと言われても
秋の魔法には 勝てないよ

[Pre-Chorus]
笑い声が 夜空に弾けて
いつもの街が 別世界
少しだけ 近づいた距離に
胸が きゅっとなる

[Chorus 1]
パンプキン☆イルミネーション
オレンジ色の 恋の魔法
Trick or Treatより
君と笑いたい!
パンプキン☆イルミネーション

パンプキン☆イルミネーション
キラキラ光る 帰り道
甘いスイーツより
甘い時間を ください♡

[Verse 2]
ちょっと怖そうな 顔をして
「食べちゃいますよ?」なんて
驚いた顔に 吹き出して
二人で大笑い

かわいく言えば 照れちゃうし
普通に言えば 恥ずかしい
でも今日は ハロウィンだから
少しくらい 大胆でもいいよね?

[Pre-Chorus 2]
オレンジ色の 街灯が
二人の影を 長くする
ふざけていた はずなのに
心だけ ドキドキ

[Chorus 2]
パンプキン☆イルミネーション
笑顔が光る 夜の街
Trick or Treatより
君と歩きたい!
パンプキン☆イルミネーション

パンプキン☆イルミネーション
カボチャ色の 恋心
怖いものなんて
二人なら 平気だよ♡

[Bridge]
写真を一枚
今日の思い出
笑った顔まで
残しておこう

来年もまた
こんな夜が来たら
今日よりもっと
笑えますように

[Final Chorus]
パンプキン☆イルミネーション
オレンジ色の 夢の街
Trick or Treatより
君と笑いたい!
パンプキン☆イルミネーション

パンプキン☆イルミネーション
キラキラ光る 秋の夜
甘いスイーツより
甘い恋を 見つけた♡

[Outro]
Trick or Treat……
また来年も 一緒にね
オレンジ色の光が
二人を そっと照らしてる

 

第2部・秋🍠 外伝4『パンプキン☆イルミネーション』

第1節「パンプキン・ハロウィン!」🎃🍁


十月も終わりに近づいた頃。

夏の暑さはすっかり消えて、街を吹き抜ける風には、少し冷たさが混じるようになっていた。

放課後。

高校の門を出たるなは、制服のポケットからスマートフォンを取り出した。

画面には、少し前に届いたメッセージ。

『今、学校の近くにいる』

その短い一文を見るだけで、るなの顔が自然と笑顔になる。

「……先輩、来てるんだ」

今日は大学の授業が早く終わったらしい。

美大に通うようになってから、先輩と会える日は以前より少なくなった。

だからこそ。

こうして「会いたい」と思って会える日は、るなにとって特別だった。

スマートフォンをしまい、辺りを見回す。

すると――

「あっ!」

少し離れた場所に、見慣れた姿が見えた。

「先輩!」

るなが小走りで近づいていく。

「お待たせしました!」

「おう。お疲れ」

「先輩も、お疲れさまです!」

「今日、授業が早く終わったから」

「そうなんですね」

「うん」

先輩が笑う。

「……ちょっと会いたくなって」

「……」

るなの動きが、一瞬止まった。

「……えへへ」

思わず笑ってしまう。

「私も……会いたかったです」

「そっか」

二人は並んで歩き始めた。

すると――

駅へ向かう途中の商店街が、いつもとは少し違って見えた。

「あれ?」

るなが足を止める。

商店街の入り口。

そこには、大きなオレンジ色のカボチャ。

その周りには、黒いコウモリや白いおばけ。

紫色のリボン。

そして、たくさんの小さなランタン。

「……ハロウィン!」

るなの目が輝いた。

「そういえば、もうすぐだな」

「すごいです!」

るなは飾りを眺めながら、左右を見回す。

「カボチャがいっぱい!」

「本当に好きだな、こういうの」

「好きです!」

即答だった。

「こういう季節限定のイベントって、なんだかワクワクしません?」

「まあ、わかるけど」

「しかも……」

るなが看板を指差す。


そこには、

『パンプキン・ハロウィンフェスティバル開催!』

と書かれていた。

「今日、イベントやってるみたいです!」

「本当だ」

「行きましょう!」

「即決だな」

「だってハロウィンですよ?」

「理由になってるような、なってないような……」

「なってます!」

るなは笑った。

「今日はハロウィンを楽しむ日です!」

「まだハロウィン当日じゃないけど」

「気持ちはもうハロウィンです!」

「なるほど」

先輩も笑う。

二人はそのまま、商店街のイベント会場へ向かった。

会場に入ると、さらにたくさんの飾りが目に飛び込んできた。

オレンジ色のライト。

カボチャのランタン。

魔女の帽子。

小さなゴースト。

壁には、

「Trick or Treat!」

という文字。

「わぁ……!」

るなは完全に夢中だった。

「見てください、先輩!」

「ああ」

「あっちにもカボチャ!」

「うん」

「こっちにはおばけ!」

「うん」

「あっ、あれ可愛い!」

「全部見るの?」

「もちろんです!」

先輩は笑いながら、るなの後をついていく。

「……なんか、るなって」

「はい?」

「こういうところに来ると、いつも以上に元気になるな」

「そうですか?」

「うん」

「だって楽しいですから!」

るなは笑顔で答える。

その笑顔を見て、先輩も自然に笑った。

「まあ、楽しそうだからいいか」

「先輩も楽しんでくださいね」

「俺も?」

「はい!」

「じゃあ、頑張って楽しむ」

「頑張るものじゃないですよ!」

二人で笑う。

少し歩いたところで、イベントスタッフから小さな袋を渡された。

「こちら、ハロウィンのお菓子です」

「ありがとうございます!」

るなは袋を受け取る。

中には小さなキャンディやクッキーが入っている。

「わぁ……!」

「よかったな」

「はい!」

るなは袋を大切そうに眺める。

そして、ふと思いついたように先輩を見る。

「……先輩」

「ん?」

「お菓子、持ってます?」

「今もらったけど?」

「そうじゃなくて」

るなが少しだけいたずらっぽく笑った。

「私にくれるお菓子です」

「え?」

「だってハロウィンですよ?」

「……」

先輩は少し考える。

「じゃあ、これ」

さっきもらったキャンディを一つ差し出す。

「はい」

「……」

るなはキャンディを受け取った。

そして――

「Trick or Treat!」

「今さら?」

「ハロウィンですから!」

「さっきもらったお菓子じゃないか」

「それでもです!」

るなは楽しそうに笑う。

先輩も笑った。

「じゃあ……Trick or Treat」

「え?」

今度は先輩が、るなに向かって手を差し出した。

「俺も」

「……ふふっ」

るなは笑いながら、自分のお菓子袋からクッキーを一枚取り出した。

「はい、どうぞ」

「ありがとう」

「これでお互い、いたずらなしですね」

「そうだな」

「……でも」

るなが少し考える。

「お菓子がなくなったら?」

「どうする?」

るなはニッと笑った。

「そのときは……」

「そのときは?」

「また買いに行きましょう!」

「やっぱり食べるんだな」

「ハロウィンですから!」

また二人の笑い声が、オレンジ色の街に響いた。

夕方の光が少しずつ薄くなっていく。

その代わりに、会場のランタンが一つ、また一つと灯り始める。

オレンジ色の光。

紫色の光。

黄色い光。

そして――

カボチャの形をした小さなイルミネーション。

るなはその光を見上げながら、先輩の隣で微笑んだ。

「……きれいですね」

「うん」

「今日は、楽しくなりそうです」

「まだ始まったばかりだぞ」

「はい!」

るなは元気よく頷いた。

そして――

その瞳の中にも、小さなオレンジ色の光が灯っていた。

秋の夜。

二人のハロウィンが、始まった。

――Trick or Treat!🎃✨

今日だけは、いつもより少しだけ。

子どもみたいに笑ってもいい。

大切な人と一緒なら――。

🎃🍁💕

 

第2節「パンプキンスイーツは反則です!」🍰🎃


ハロウィンイベントの会場を歩いていると――

ふわっ。

甘い香りが、るなの鼻をくすぐった。

「……!」

るなの足が止まる。

「先輩」

「ん?」

「今……」

るなが、くんくんと鼻を動かす。

「甘い匂いがしました」

「そう?」

「しました!」

先輩が周りを見回す。

すると少し先に、ハロウィン限定スイーツの屋台が並んでいた。

大きな看板には、

『パンプキンスイーツフェア』

の文字。

「……あ」

るなの目が輝く。

「……先輩」

「うん」

「行きましょう」

「やっぱり?」

「はい!」

返事と同時に、るなは屋台へ向かって歩き出した。

「ちょっと待って」

「早くしないと売り切れちゃいます!」

「まだいっぱいあるだろ」

「でも、限定ですよ!」

「そこ重要なんだな」

「ものすごく重要です!」

屋台の前に到着すると、そこには色とりどりのパンプキンスイーツが並んでいた。

パンプキンプリン。

パンプキンモンブラン。

かぼちゃのシュークリーム。

パンプキンアイス。

パンプキンラテ。

パンプキンケーキ。

そして――

「……先輩」

「どうした?」

るなが一点を見つめている。

その視線の先にあったのは、

巨大パンプキンパフェ。

オレンジ色のパンプキンアイス。

その上にはホイップクリーム。

小さなカボチャ型クッキー。

紫色のゼリー。

そして、てっぺんにはチョコレートでできた小さな魔女の帽子。

「…………」

「るな?」

「…………」

「聞こえてる?」

「……はい」

「どうした?」

るなは真剣な顔で答えた。

「……あれです」

「うん」

「あれが……私を呼んでます」

「呼んでないと思うけど」

「呼んでます!」

「どんな声で?」

るなはパフェを見つめたまま、小さく言った。

「……食べて♡って」

「幻聴じゃない?」

「違います!」

先輩が笑う。

「じゃあ、食べる?」

「……いいんですか?」

「いいよ」

「やったー!」

るなの顔が一気に明るくなる。

「ありがとうございます!」

二人は席に座り、巨大パンプキンパフェをテーブルの真ん中に置いた。

「……大きいですね」

「思ったより大きいな」

「これ、一人用ですか?」

「たぶん」

「……」

るながスプーンを持ったまま、パフェを見る。

そして先輩を見る。

もう一度パフェを見る。

「……無理です」

「早いな」

「でも食べたいです」

「どうする?」

るなは少し考えた。

そして――

「半分こ」

「また?」

「またです!」

るなは笑った。

「半分こなら大丈夫です!」

「本当に?」

「はい!」

「じゃあ、決まり」

二人はそれぞれスプーンを持った。

「いただきます!」

るなが最初にパンプキンアイスをひとくち。

「……!」

目を閉じる。

「どう?」

「……おいしいです」

「そんなに?」

「はい……!」

るなの表情が、どんどん幸せそうになっていく。

「かぼちゃの甘さがちゃんとあって……」

もう一口。

「アイスが冷たくて……」

さらに一口。

「クリームがふわふわで……」

先輩が笑う。

「感想が止まらないな」

「だって、おいしいんです!」

「はいはい」

「先輩も食べてください」

「じゃあ、いただきます」

先輩もスプーンを入れる。

「……うん。おいしい」

「ですよね!」

るなが嬉しそうに笑う。

「一緒に食べると、もっとおいしいです」

「それ、焼きいものときも言ってたな」

「だって本当ですから」

「じゃあ、何でも二人で食べたらおいしくなる?」

るなは少し考えた。

「……たぶん」

「たぶん?」

「いえ」

るなが笑う。

「きっと、そうです」

パフェを食べ進めるうちに、二人のスプーンが何度か同じ場所へ向かった。

「あ」

「……」

一瞬、止まる。

「先輩、どうぞ」

「いや、るなが食べていいよ」

「でも……」

「半分こなんだから」

「……じゃあ」

るなは少し笑って、ひとくち食べる。

「おいしい……」

「よかったな」

「はい」

また一口。

すると、るなの頬に小さくクリームがついた。

「るな」

「はい?」

「ここ」

先輩が自分の頬を指差す。

「……?」

「クリームついてる」

「えっ?」

るなが慌てて頬を触る。

「取れました?」

「まだ」

「こっちですか?」

「反対」

「えっ、こっち?」

「もうちょっと上」

「ここ?」

「うん」

るなは何度も頬を触る。

先輩が笑った。

「惜しい」

「惜しいって何ですか!」

「そこじゃない」

「もう……!」

るなも笑ってしまう。

「自分で鏡見ればよかったです」

「はい」

先輩がポケットからスマートフォンを取り出して、画面を見せる。

「ここ」

「あ……!」

ようやくクリームを見つけた。

「本当だ……」

るなは指でそっと拭う。

「ありがとうございます」

「どういたしまして」

そして、るなはそのクリームを見つめる。

「……」

「どうした?」

「これも、おいしそうですね」

「そこ?」

🤣

パフェは、あっという間になくなっていった。

「……」

るなが空になった器を見つめる。

「なくなっちゃいました」

「食べるの早かったな」

「二人で食べたからです」

「そうだな」

「でも……」

るなが少し寂しそうにする。

「もうちょっと食べたかったです」

「まだ他にもあるぞ」

「……!」

るなの目が再び輝く。

「パンプキンプリン……」

「あるな」

「パンプキンモンブラン……」

「ある」

「パンプキンラテ……」

「あるな」

「パンプキンシュー……」

「ある」

「……」

先輩が苦笑する。

「まだ食べる気?」

るなは真剣な顔で答えた。

「……秋ですから」

「便利な言葉だな」

「秋は、おいしい季節なんです!」

「さっきも聞いた」

「大事なことなので!」

るなは胸を張った。

「それに今日はハロウィンです!」

「だから?」

「パンプキンを食べる日です!」

「そういう決まりだった?」

「今、決まりました!」

「また?」

二人は顔を見合わせて笑った。

結局。

二人はパンプキンプリンを一つだけ追加で買って、仲良く半分こすることにした。

スプーンを入れると、プリンの表面がぷるんと揺れる。

「わぁ……」

るなが嬉しそうに眺める。

「かわいいですね」

「食べるんだろ?」

「もちろんです」

ひとくち。

「……甘い」

るなの表情が、とろけるように緩む。

「かぼちゃの味がして……」

「うん」

「でも、さっきのパフェとはまた違って……」

「スイーツ評論家になってない?」

「好きなものには全力です!」

「それ、秋いちごのときにも言ってたな」

「はい!」

るなが笑う。

「好きなものは、何度でも全力です!」

その言葉に、先輩は少しだけ微笑んだ。

「……そういうところ、るならしいな」

「そうですか?」

「うん」

「じゃあ……」

るなはプリンをもう一口食べる。

「これからも全力で食べます!」

「そこは宣言するんだ」

「します!」

二人の笑い声が、ハロウィンの会場に響いた。

空が少しずつ暗くなっていく。

会場の照明が、一つずつ灯り始める。

オレンジ色のカボチャ。

黄色い小さなランタン。

紫色の星。

そして――

二人のテーブルを照らす、柔らかな明かり。

るなは食べ終えたスイーツの器を眺めながら、ふっと笑った。

「……今日、楽しいですね」

「うん」

「おいしくて」

「うん」

「いっぱい笑って」

「うん」

「先輩と一緒で……」

そこで、るなは少しだけ言葉を止めた。

でも、今度は恥ずかしがって黙り込むことはなかった。

そのまま自然に笑う。

「……すごく楽しいです」

先輩も笑った。

「俺も」

二人の間には、甘いパンプキンスイーツの香りがまだ残っている。

秋の夜に漂う、甘くて優しい香り。

その香りの中で、るなは思った。

恋って、甘いだけじゃない。

でも。

こうして好きな人と笑いながら過ごす時間は――

やっぱり、少し甘い。

そして。

「……先輩」

「ん?」

るながいたずらっぽく笑う。

「次は、パンプキンモンブランです」

「まだ食べるの?」

「……半分こで」

「はいはい」

「やった!」

また笑い声が響く。

オレンジ色の光に包まれながら。

二人のハロウィンの夜は――

まだ始まったばかりだった。

🎃🍰✨

甘い香りに誘われて。

甘いスイーツを半分こして。

甘い笑顔を、二人で分け合う。

そんな秋の一日は、

少しずつ――

パンプキン色に染まっていった。

 

第3節「Trick or Treat!」👻💕🎃


パンプキンスイーツを食べ終えた二人は、再びイベント会場を歩いていた。

夕方になり、辺りは少しずつ暗くなっている。

その代わりに、会場のあちこちでライトが点灯し始めていた。

オレンジ。

黄色。

紫。

カボチャやゴーストの形をした小さなイルミネーションが、夜の街を少しずつ彩っていく。

「わぁ……」

るなは足を止めた。

「さっきより、もっとハロウィンっぽくなってます!」

「暗くなってきたからな」

「昼間と全然違いますね」

「うん」

二人が歩いていると、広場の一角から賑やかな声が聞こえてきた。

「何かやってますね」

「行ってみる?」

「はい!」

るなが先に歩き出す。

画像
広場には、ハロウィン限定のゲームコーナーが並んでいた。

カボチャの輪投げ。

ゴーストボール投げ。

おばけ迷路。

そして――

「ハロウィン・チャレンジ!」

という大きな看板。

「チャレンジ?」

るなが看板を読む。

そこには、

ゲームに成功すると、お菓子をプレゼント!

と書かれていた。

「……!」

るなの目が輝いた。

「先輩」

「うん」

「やりましょう」

「やっぱり?」

「お菓子ですよ?」

「理由はそれ?」

「大事です!」

先輩が笑った。

「じゃあ、やるか」

「はい!」

最初のゲームは、カボチャの輪投げだった。

いくつか並んだカボチャ型の的に、輪を投げて入れるゲーム。

「先輩、見ていてください」

るなが腕まくりをする。

「そんなに本気?」

「お菓子がかかってますから」

「さっきも食べたのに」

「別腹です」

「便利だな、別腹」

「女子には必要なんです!」

「そうなの?」

「そうです!」

るなは真剣な顔で輪を構える。

「いきます!」

ひゅっ。

ぽん。

輪は的の手前に落ちた。

「……」

「惜しかったな」

「……もう一回」

「はいはい」

二回目。

ひゅっ。

ころん。

また外れた。

「……」

るなの表情が変わる。

「先輩」

「ん?」

「私、本気出します」

「さっきも本気だっただろ」

「今からが本気です!」

三回目。

るなは深呼吸する。

狙いを定めて――

「えいっ!」

ころん。

輪がカボチャの角に当たり、そのまま――

すぽっ。

「……!」

「入った!」

「やったーーー!!」

るなが両手を上げる。

「入りました!」

「おめでとう」

「お菓子です!」

「そこなんだな」

スタッフから小さなお菓子の袋を受け取る。

るなは嬉しそうに眺めた。

「頑張ってよかったです……!」

「そんなに?」

「はい!」

そして袋を開けようとする。

「今食べるの?」

「……」

るなの手が止まった。

「……食べたいです」

「やっぱり」

二人で笑う。

次のゲームは、ゴーストボール投げ。

白いボールを投げて、並んでいるゴーストの的を倒すゲームだ。

「これは俺がやるよ」

先輩が前へ出る。

「先輩、頑張ってください!」

「任せて」

先輩がボールを構える。

「いくぞ」

ぽんっ。

一つ目――成功。

二つ目――成功。

三つ目――

「……!」

惜しくも外れる。

「あと一つでしたね」

「くそっ」

「悔しそう」

「意外と難しい」

るなが笑う。

「先輩も本気ですね」

「お菓子がかかってるから」

「ふふっ」

「るな?」

「私と同じこと言ってます」

「……確かに」

二人で笑う。

そして最後の一投。

先輩が狙いを定める。

「いけ!」

ぽんっ。

ゴーストの的が――

ころん。

「やった!」

「すごいです!」

るなが拍手する。

スタッフからお菓子を渡されると、先輩はそれをるなに差し出した。

「はい」

「え?」

「るなに」

「私に?」

「うん」

「……いいんですか?」

「一緒に食べよう」

「……はい!」

るなは嬉しそうに受け取った。

そのとき。

会場のスピーカーから、元気な声が響いた。

「次のイベントは――!」

「Trick or Treatチャレンジです!」

「参加者は前へどうぞ!」

るなが振り返る。

「……」

「るな?」

「……行きましょう」

「え?」

「Trick or Treatです!」

「参加するの?」

「もちろんです!」

「何するんだ?」

「わかりません!」

「わからないのに?」

「ハロウィンですから!」

「それ、何でも通るな」

「今日は通るんです!」

🤣🎃

ステージの前に、何人かの参加者が集まる。

ルールは簡単だった。

二人一組になり、出されたお題に合わせて、

「Trick or Treat!」

と言いながら、相手にお菓子を渡す。

ただし――

そのお題が少し変わっていた。

「笑顔で!」

「驚いた顔で!」

「怖そうに!」

「かわいく!」

など。

るなと先輩は顔を見合わせる。

「どうします?」

「やるしかないだろ」

「ですね!」

最初のお題。

「怖そうに!」

るなが先輩を見る。

先輩もるなを見る。

「……Trick or Treat」

低い声。

るなが吹き出す。

「ふふっ!」

「笑ったらダメだろ」

「だって先輩……!」

「何?」

「全然怖くないです!」

「るなもやってみて」

「はい!」

るなが少し顔を伏せる。

そして――

「Trick or Treat……」

できるだけ低い声を作る。

「……お菓子をくれないと……」

顔を上げる。

「食べちゃいますよ?」

「それ、怖いっていうより……」

先輩が笑う。

「るならしいな」

「え?」

「結局、食べるんだなって」

「……!」

会場からも笑い声が起きる。

「もう!」

るなは頬を膨らませた。

でも――

自分でもおかしくなって、結局笑ってしまう。

次のお題は、

「かわいく!」

「これは、るなの得意分野じゃない?」

「先輩、それどういう意味ですか?」

「そのままの意味」

「……じゃあ」

るなは両手を胸の前に合わせる。

そして笑顔で、

「Trick or Treat♡」

「……」

先輩が少し固まる。

「どうしました?」

「いや……」

「?」

「普通にかわいいなと思って」

「……」

今度は、るなが固まった。

「……そういうの」

「ん?」

「急に言うの、反則です」

「そう?」

「はい」

るなは少し照れながら笑う。

「でも……ありがとうございます」

先輩も笑った。

「じゃあ、俺も」

先輩が少し考えてから――

「Trick or Treat」

るなはじっと先輩を見る。

「……かわいいです」

「え?」

「なんだか、かわいいです」

「俺が?」

「はい」

「それは褒めてる?」

「もちろんです!」

二人で笑った。

最後のお題は、

「大切な人にお菓子を渡してください」

その文字を見た瞬間。

るなと先輩は、少しだけ顔を見合わせた。

さっきまでのふざけた空気が、ほんの少しだけ静かになる。

先輩がポケットから、さっきもらったお菓子を一つ取り出す。

「……はい」

るなの手のひらに、そっと乗せる。

「Trick or Treat」

「……」

るなは、そのお菓子を見つめた。

そして――

自分のお菓子袋から一つ取り出す。

「じゃあ、私も」

先輩の手に乗せる。

「Trick or Treat」

「ありがとう」

「こちらこそ」

二人は顔を見合わせる。

そして、同時に笑った。

「……なんか、楽しいですね」

るなが言う。

「うん」

「こういうの」

「うん」

「子どもみたいに遊ぶのも」

「たまにはいいな」

「はい!」

るなは嬉しそうに笑った。

「先輩と一緒だから、余計に楽しいです」

「俺も」

その言葉に、るなは少しだけ照れた。

でも。

今度は恥ずかしくて俯くことなく、そのまま笑顔でいられた。

イベントが終わる頃には、空はすっかり暗くなっていた。

会場を彩るカボチャのイルミネーションが、夜の街をオレンジ色に染めている。

るなはもらったお菓子を大切そうに袋へしまった。

「今日、いっぱいもらいましたね」

「そうだな」

「食べるの楽しみです」

「まだ食べるんだ」

「もちろんです」

「さすがだな」

「食べ物は幸せですから!」

「うん」

先輩は笑った。

そして、るなの笑顔を見る。

今日一日。

甘いスイーツを食べて。

ゲームで盛り上がって。

くだらないことで笑って。

お菓子を交換して。

――たくさん笑った。

るなも、そんな今日を思い返していた。

「……先輩」

「ん?」

「今日、すごく笑いましたね」

「そうだな」

「私、こんなに笑ったの久しぶりかも」

「俺も」

二人は、また笑う。

オレンジ色の光が、二人の笑顔を優しく照らしていた。

ハロウィンの夜は、まだ続いている。

そして――

その光の向こうには、

これから始まる秋の夜が待っていた。

🎃👻✨

Trick or Treat!

お菓子をもらって。

いたずらして。

いっぱい笑って。

好きな人と過ごす時間を楽しんで。

そんな何気ない一日が――

いつの間にか、

心の中に残る、大切な思い出になっていた。

そして二人の笑顔は、

オレンジ色の光の中で、

静かに輝いていた。

 

第4節「オレンジ色の帰り道」


ハロウィンイベントが終わる頃。

空はすっかり暗くなっていた。

さっきまで賑やかだった会場も、少しずつ落ち着きを取り戻している。

それでも、街のあちこちにはオレンジ色の明かりが残っていた。

カボチャのランタン。

小さなイルミネーション。

店先に飾られたハロウィンライト。

夜の街が、まるで大きなカボチャの灯りに包まれているようだった。

「……きれいですね」

るなが立ち止まる。

「うん」

先輩も隣で光を見上げた。

「昼間とは全然違います」

「暗くなったからな」

「でも……」

るなは周りを見渡す。

「なんだか、オレンジ色の街って感じがします」

「確かに」

二人はゆっくり歩き始めた。

商店街を抜けると、少し静かな通りに出る。

さっきまで聞こえていたイベントの音楽も、遠くなっていく。

聞こえるのは、二人の足音。

そして、秋の夜風。

「……ちょっと寒くなりましたね」

るなが両手をこすり合わせる。

「もう十月も終わりだからな」

「秋って、気づいたら寒くなってますよね」

「そうだな」

「夏はあんなに暑かったのに」

「本当に」

るなは空を見上げる。

「今年の夏……」

「うん?」

「いろいろありましたね」

先輩も空を見る。

「花火とか?」

「はい」

るなが微笑む。

「夏祭りに行って、花火を見て……」

「懐かしいな」

「まだそんなに経ってないのに」

「季節が変わると、ずいぶん前みたいに感じるな」

「……ですよね」

るなは少しだけ歩く速度を落とした。

夏の夜空に咲いた花火。

あのときの胸の高鳴り。

好きな人の隣にいるだけで、どうしていいかわからなくなった気持ち。

それに比べて――

今は。

隣を歩くことが、こんなにも自然だった。

「先輩」

「ん?」

「私、少し変わった気がします」

「何が?」

「夏の頃より……」

るなは少し考える。

「先輩と一緒にいることに、慣れたのかもしれません」

「慣れた?」

「はい」

そして、ふっと笑う。

「でも、嫌な意味じゃないですよ?」

「わかってる」

「前は、会うだけでドキドキして」

「今も?」

「……ちょっとはします」

「ちょっとなんだ」

「ちょっとです!」

るなが笑う。

「でも今は、それより――」

少し先にあるオレンジ色の街灯を見る。

「一緒に歩いてるのが楽しいです」

先輩は何も言わずに笑った。

しばらく歩いていると、るながスマートフォンを取り出した。

「先輩」

「ん?」

「写真、撮りませんか?」

「また?」

「今日の記念です!」

「さっきも撮ったじゃん」

「でも、これは夜バージョンです」

「夜バージョン?」

「はい!」

るなはオレンジ色に輝くハロウィンの飾りの前へ移動する。

「ここ、すごく綺麗です」

「じゃあ撮るか」

「お願いします!」

先輩がスマートフォンを構える。

「笑って」

「もう笑ってます!」

「じゃあ、そのまま」

カシャッ。

写真が撮れる。

「見せてください」

るなが画面を覗き込む。

そこには――

オレンジ色の光に照らされた二人の姿。

「……」

るなはしばらく黙っていた。

「どう?」

「……いい写真ですね」

「うん」

「今日のこと、ちゃんと残ってます」

「写真だけじゃなくて、覚えてるだろ?」

「もちろんです」

るなは笑った。

「でも、写真があると……」

少しだけスマートフォンを胸元に近づける。

「あとから見たときに、今日のことを思い出せますから」

「じゃあ、大事にしないとな」

「はい」

るなは嬉しそうに頷いた。

再び歩き出す。

今度は先輩が、ふと思い出したように言った。

「そういえば」

「はい?」

「来年もハロウィンやるのかな」

「絶対やりますよ」

「絶対?」

「だって毎年ありますから」

「じゃあ、来年も来る?」

「……!」

るなの表情が明るくなる。

「行きたいです!」

「じゃあ、来年も」

「約束です!」

るなが笑う。

「来年はもっと大きいパンプキンパフェを食べましょう!」

「また食べるの?」

「もちろんです!」

「今年でも十分大きかったけど」

「来年は二人用の特大サイズです!」

「それ、二人で食べ切れる?」

「……頑張ります」

「やっぱり食べるんだな」

「食べます!」

二人で笑う。

「じゃあ、来年までにお腹を空かせておかないとな」

「はい!」

「その前に冬が来るけど」

「冬は……」

るなが少し考える。

「イルミネーションです」

「そうだな」

その言葉を聞いて、るなは少しだけ笑った。

駅へ近づくにつれて、人通りも増えてくる。

でも、るなの気持ちは不思議なくらい穏やかだった。

今日一日。

たくさん笑った。

たくさん食べた。

たくさん遊んだ。

そして――

また一つ、先輩との思い出が増えた。

るなは歩きながら、今日のことを振り返る。

「パンプキンパフェ……」

「そこから?」

「はい」

「やっぱり食べ物なんだな」

「だって、おいしかったですから」

「確かに」

「それから、ゲームも楽しかったです」

「輪投げ、三回目で成功したやつ?」

「そうです!」

「かなり本気だったな」

「お菓子がかかってましたから!」

「まだ言ってる」

るなが笑う。

「それから……」

少し考える。

「Trick or Treatも」

「うん」

「先輩とお菓子を交換したことも」

「うん」

そして――

「いっぱい笑ったこと」

先輩がるを見る。

「今日、一番楽しかったのは?」

るなは少し考えてから答えた。

「……全部です」

「全部?」

「はい」

そして、優しく笑う。

「先輩と一緒だったから」

先輩も笑った。

「俺も」

駅前に着く。

時計を見ると、もうかなり遅い時間になっていた。

「今日は、そろそろ帰らないとな」

「……はい」

楽しかった時間が、終わりに近づいている。

でも――

るなは寂しそうな顔をしなかった。

「今日は、本当にありがとうございました」

「俺も楽しかった」

「また会いましょうね」

「うん」

「次は……」

るなが少し考える。

「冬ですね」

「そうだな」

「冬のイルミネーション」

「楽しみだな」

るなは笑った。

「……はい」

二人はしばらく見つめ合う。

そして。

「じゃあ、また」

「またね」

るなが手を振る。

先輩も手を振り返す。

少しずつ離れていく。

るなは何度か振り返りながら歩いた。

そして最後にもう一度――

「先輩!」

「ん?」

「来年も、ハロウィンですよ!」

「覚えてるよ」

「約束です!」

「約束」

るなは満面の笑顔で手を振った。

一人になった帰り道。

街にはまだ、ハロウィンの飾りが残っている。

オレンジ色の光。

黄色い街灯。

少し冷たい秋の夜風。

るなは、さっき撮った写真をスマートフォンで見た。

「……ふふっ」

自然に笑みがこぼれる。

その写真の中の自分も、笑っている。

「今日、いっぱい笑ったなぁ……」

そして、ふと思う。

焼きいもを食べた日も。

お月見をした夜も。

今日のハロウィンも。

全部違う一日なのに。

どの日にも、共通しているものがある。

隣に、先輩がいたこと。

「……だから、楽しいんだ」

るなは小さく呟いた。

オレンジ色の光の下で、その笑顔が優しく輝く。

それは、カボチャのランタンの光。

街灯の光。

そして――

今日という一日の思い出が灯した、心の光。

三つの光が重なって、

秋の夜道を柔らかく照らしていた。

るなは家へ向かって歩く。

その足取りは軽かった。

明日になれば、またいつもの日常が始まる。

学校があって。

勉強があって。

先輩は大学で絵を描いている。

毎日会えるわけではない。

それでも。

「またね」がある。

「来年も」がある。

そして――

「冬に会おう」がある。

それだけで、未来が少し楽しみになる。

るなは空を見上げた。

「……次は冬かぁ」

その声には、少しだけ期待が混じっていた。

オレンジ色のハロウィンの光は、もうすぐ消えてしまう。

けれど。

その光が消えても――

今日の笑顔まで消えるわけじゃない。

胸の中に残った温かさは、

次の季節へと持っていける。

秋の終わり。

冬の始まり。

そして、その先に待っている未来。

るなは微笑んだ。

「また、会えますように」

そう呟いて――

オレンジ色の帰り道を、ゆっくり歩いていった。

🎃🍁✨

ハロウィンの夜に灯った、オレンジ色の光。

それは、ただ街を飾るイルミネーションじゃない。

今日二人で笑った時間。

一緒に食べた甘いスイーツ。

交換した小さなお菓子。

そして、

「また来年も」という約束。

その全部が重なった、

二人だけの思い出の光だった。

 

第5節「パンプキン☆イルミネーション」


駅へ向かっていたるなは、ふと足を止めた。

「……先輩」

「ん?」

「もう一回だけ、見に戻りませんか?」

先輩が振り返る。

「何を?」

るなが指差した先。

そこには、さっきまで二人が楽しんでいたハロウィンイベントの会場があった。

夜になったことで、昼間よりもずっと鮮やかに輝いている。

「イルミネーションです」

「まだ見たい?」

「……はい」

るなは少し照れながら笑った。

「今日の最後に、もう一度だけ」

「じゃあ、行こうか」

「はい!」

二人は来た道を少しだけ戻った。

会場に近づくにつれて、オレンジ色の光が大きくなっていく。

カボチャのランタン。

小さなゴースト。

星形のライト。

そして、会場の中央に飾られた大きなパンプキンイルミネーション。

昼間に見たときとは、まるで別のもののようだった。

「……わぁ」

るなは思わず声を漏らした。

「きれい……」

「本当に綺麗だな」

大きなカボチャは、たくさんの小さな光で彩られていた。

その光は、オレンジ色。

でも、一色だけではない。

黄色が混ざり。

金色が混ざり。

ところどころに紫色の光が揺れている。

まるで秋の夜に浮かぶ、小さな星空のようだった。

「昼間は可愛い感じでしたけど……」

るながゆっくり見上げる。

「夜になると、なんだか幻想的ですね」

「うん」

「カボチャなのに……」

「カボチャなのに?」

「こんなに綺麗になるんですね」

先輩が笑う。

「るな、今日はカボチャを何回褒めた?」

「数えてません」

「かなり褒めてるぞ」

「だって可愛いですから」

「確かに」

るなは笑った。

二人はイルミネーションの前にあるベンチに腰を下ろした。

少し離れたところでは、まだイベントを楽しむ人たちの声が聞こえる。

でも、二人の周りは不思議と静かだった。

秋の夜風が、るなの髪を優しく揺らす。

「……寒くない?」

「少しだけ」

「大丈夫?」

「はい」

るなは両手を合わせる。

そして、オレンジ色の光を見つめる。

「今日……」

「うん」

「本当に楽しかったですね」

「楽しかったな」

「パンプキンスイーツ食べて」

「うん」

「ゲームして」

「輪投げ、三回目で成功したな」

「それは忘れてください!」

「なんで?」

「最初の二回は見なかったことにしたいです」

「でも三回目は成功した」

「はい!」

るなが笑う。

「それから、Trick or Treatして」

「お菓子交換したな」

「はい」

「写真も撮った」

「はい」

るなは、今日撮った写真をスマートフォンで開く。

そこには、オレンジ色の光の中で笑う二人。

「……この写真、好きです」

「俺も」

「今日の私、ずっと笑ってますね」

「そうだな」

「こんなに笑ってたんだ……」

るなは画面を見ながら、小さく笑った。

「なんでだろう」

「楽しかったからじゃない?」

「……それだけかな」

「他にある?」

るなは少し考えた。

そして――

「先輩が一緒だったから」

静かに答えた。

先輩は、少しだけ照れたように笑った。

「俺も」

「……」

「るなと一緒だったから楽しかった」

その言葉を聞いても、るなは以前ほど慌てなかった。

胸の奥が、ほんのり温かくなる。

嬉しい。

それだけで十分だった。

「……なんだか」

「ん?」

「夏の頃とは違いますね」

「何が?」

「先輩と一緒にいるときの気持ち」

るなはイルミネーションを見る。

「夏は、花火みたいでした」

「花火?」

「はい」

夜空いっぱいに、一瞬で広がる光。

胸が高鳴って。

隣にいるだけで緊張して。

何を話したらいいのか、わからなくなるくらい。

「でも、今は……」

るなは自分の胸に手を当てる。

「もっと、ゆっくりです」

「ゆっくり?」

「はい」

少しずつ灯る。

消えそうで消えない。

そんな光。

「先輩といると、自然に笑えて」

「うん」

「安心できて」

「うん」

「また会いたいって思えて」

そして――

「また一緒に笑いたいって思います」

先輩は、静かに頷いた。

「俺も同じだよ」

その瞬間。

会場の照明が少し暗くなった。

そして――

中央の巨大なパンプキンイルミネーションが、ゆっくりと明るくなる。

「……!」

るなが顔を上げる。

オレンジ色の光が、夜空の下で大きく輝いた。

「わぁ……!」

るなの瞳にも、その光が映る。

「すごい……」

「綺麗だな」

「はい……」

るなは、しばらく言葉を失っていた。

カボチャの形をした光。

秋の夜を彩る光。

街を照らす光。

そして――

その光に照らされている、自分たち。

るなはふと思った。

「……パンプキン☆イルミネーション」

「うん?」

「今日のこの光……」

「うん」

「なんだか、私の心みたいです」

先輩がるなを見る。

「心?」

「はい」

るなは笑った。

「オレンジ色で……」

「うん」

「ちょっと甘くて……」

「パンプキンスイーツ?」

「そこじゃないです!」

二人で笑う。

「もう……」

るなは笑いながら続けた。

「でも、温かいんです」

「……そっか」

「今日、先輩といっぱい笑ったから」

るなは光を見つめる。

「心の中まで、明るくなった気がします」

しばらく二人は、何も言わずにイルミネーションを眺めていた。

静かな時間。

でも、気まずくはない。

言葉がなくても、隣にいることが心地いい。

それは、🍠外伝3で感じた「ほくほくした温かさ」と同じだった。

ただ今回は、それがオレンジ色の光になっている。

秋いちごの赤。

お月見の月明かり。

焼きいもの黄金色。

そして――

パンプキンのオレンジ。

秋のいろいろな色が、るなの心に少しずつ重なっていく。

「先輩」

「ん?」

「来年も……」

るなは少しだけ間を置く。

「また来ませんか?」

先輩は笑った。

「もちろん」

「約束です」

「約束」

るなは嬉しそうに笑った。

「じゃあ……来年もパンプキンパフェですね」

「また食べるの?」

「はい」

「今年より大きいの?」

「もちろんです!」

「食べきれる?」

「……」

るなは少し考えた。

「先輩が半分食べてくれれば大丈夫です」

「結局、俺が食べるんだな」

「半分こですから!」

「はいはい」

二人で笑う。

やがて、イベント会場の終了時間が近づいてきた。

スタッフが片付けを始める。

イルミネーションも、少しずつ消えていく。

一つ。

また一つ。

オレンジ色の光が夜の街から消えていく。

るなは、その様子を静かに見つめていた。

「……消えちゃいますね」

「うん」

「ちょっと寂しいです」

「でも、また来年ある」

「……はい」

先輩の言葉に、るなは笑った。

イルミネーションは消える。

イベントも終わる。

今日という一日も、もうすぐ終わる。

でも――

思い出は消えない。

今日撮った写真も。

一緒に食べたスイーツも。

ゲームで笑ったことも。

「Trick or Treat」と言い合ったことも。

そして、

「また来年」という約束も。

全部、心の中に残っている。

るなは、最後にもう一度だけイルミネーションを見た。

「……ありがとうございました」

「何に?」

「今日に、です」

「今日?」

「はい」

るなは笑った。

「先輩と一緒に過ごせた今日に」

先輩も微笑んだ。

「俺も、ありがとう」

二人は立ち上がり、駅へ向かって歩き出した。

さっきまで二人を照らしていたオレンジ色の光は、もう見えない。

けれど。

るなの心の中には、まだその光が残っていた。

秋いちごのような甘さ。

月明かりのような静けさ。

焼きいものような温かさ。

そして――

パンプキンのような、明るい笑顔。

それぞれの思い出が重なって。

一つの光になる。

それは、街のイルミネーションではない。

大切な人と過ごした時間が灯した、心のイルミネーション。

るなは歩きながら、隣の先輩を見る。

「……先輩」

「ん?」

「来年も、一緒に笑いましょうね」

先輩は少し笑って、

「うん」

と答えた。

「約束」

「約束です」

二人の足音が、秋の夜道に並んで響いていく。

その先には――

もうすぐ冬がやってくる。

そして冬には、また別の光が待っている。

けれど今は。

このオレンジ色の光を、大切に胸へしまっておこう。

🎃✨💕

ハロウィンの夜に灯った、パンプキンの光。

甘いスイーツの香り。

弾む笑い声。

そして、大切な人と交わした「また来年」の約束。

それらすべてが重なって――

パンプキン☆イルミネーション。

その光は、いつか消えてしまう。

でも。

心に灯った光は、消えない。

秋の夜に笑った二人の記憶は、

次の季節へ。

そして――

次の「またね」へ。

静かに続いていった。

🎃🍁✨💕

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